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【書評】『苦しかった時の話をしようか』|ビジネスマンが学ぶキャリア戦略

目次

はじめに:どんな内容か

苦しかった時の話をしようか』は、著者の森岡毅氏が自身のキャリア経験をもとに、働くことの本質や成功のための考え方を娘へと語る、そういった一冊です。

特に、キャリア形成に悩む人にとって、自己理解と戦略的思考の重要性を説く内容は大きな示唆を与えてくれるでしょう。

森岡氏はUSJのV字回復を成し遂げたマーケターとして有名です。
しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。

学生時代はコミュニケーションが苦手、P&Gに入社した際には自信を失うほどの挫折を経験したことなど、本書では著者自身の苦難のエピソードが随所にちりばめられています。 

しかし、自分の強みを分析し、戦略的にキャリアを構築していったことで、現在の輝かしい実績へと繋がります。

著者は自分の得意なことを活かせる環境に身を置くことが成功への近道」と述べています。
本書はそのたの自分の強みの見つけ方、その活かし方を教えてくれる本です。

本記事では、そのような背景も踏まえながら、本書の主要なポイントを整理し、キャリアに悩むビジネスマンがどのように活用できるかを考察していきます。

『苦しかった時の話をしようか』の基本情報


書名:苦しかった時の話をしようか
著者:森岡毅
出版年:2019年第1刷発行
ジャンル:ビジネス

やりたいことがわからないのはなぜか?

あなたも「やりたいことがわからない」といった悩みはありませんか?
その原因は、自分の中に軸がないからです。

森岡氏は「やりたいことは試行錯誤の中で見つかる」と述べています。
著者自身、P&G時代に自信を喪失しましたが、その後マーケティングの論理的思考と戦略策定スキルを磨くことで、自分の強みを活かす道を見つけました。

自分の軸をみつけるための具体的なアクション

  • 自己分析を徹底する:自分が何者で、どんな特徴を持ち、どんな時に幸せを感じるかを考える。
  • 自分の強みを明確にする:強みは成功の源であり、決して弱みからは生まれません。
  • 強みを活かせる環境を選ぶ:同じ特徴でも、環境によって強みになるか弱点になるかが変わります。
  • 経験を積むことで新たな可能性を模索する:実際に行動し、様々な経験をすることで「やりたいこと」が見えてくる。

クロキ

自分のことを知っている度合いを深め、どんなことに幸せを感じるのか。
自分のことを知る、考えるという習慣を身につけましょう

会社と結婚するな、職能と結婚せよ

森岡氏はスキルや職能こそが最大の個人的財産」と言います。
会社はいつでも倒産する可能性があり、経済的な安定を確保するためには、自分の市場価値を高めることが最重要であると。

彼自身、P&Gでマーケティングのスキルを徹底的に磨いた結果、そのスキルを活かしUSJの改革に成功しました。

特定の企業に依存するのではなく、自分の職能を磨き、それを武器にすることが重要。

また、本書では森岡氏のUSJ改革にも触れられています。
経営不振に陥っていたUSJは、従来のテーマパークの枠組みを超えたマーケティング戦略を導入することで再生に成功しました。
そのプロセスの中で、彼は「職能があればどこでも戦える」という信念を強くしたと言います。

職能を磨く具体的なアクション

  • 会社に依存せず、スキルを磨く:転職市場で評価されるスキルを習得する。
  • AIに奪われない創造的な仕事を選ぶ:単純作業ではなく、戦略思考や人間関係構築が求められる分野に注力する。
  • 市場価値を常に意識し、転職や起業の選択肢を持つ:定期的に市場価値を測定し、必要なスキルを補強する。

クロキ

キャリアにおいて不正解を掴んでしまった人の多くは、自己分析の不足が原因だそうです

資本家の視点を持つ

森岡氏は、資本主義社会において労働者としての立場だけでなく、資本を持つ側へ移行することも大切だと言っています。

サラリーマンのピラミッドの外に、資本家の世界がある」ことを意識することが重要です。

持たざる者が持つ者になるには、資本家へとシフトしていくのがベストです。

USJ改革を通じて「企業の経営戦略がいかに資本の論理に基づいているか」を痛感し、それを読者にも伝えています。

資本家の視点を手に入れるための具体的なアクション

  • 株を買うことを意識する:給与を消費するのではなく、資産運用に回す。
  • 企業の成功報酬として株を得る道を模索する:ストックオプションや株式報酬を意識する。
  • 起業や経営改善のスキルを磨く:小さなビジネスを始めることで、資本家としての視点を養う。

クロキ

どこで何をしていても労働市場での自分の価値を常に意識しないといけません

キャリアの市場価値を高める

キャリア戦略を立てる際には、以下の3つの要素を考慮することが重要になります。

  1. 己の特徴を理解する
  2. それを磨く努力をする
  3. 最適な環境を選ぶ

また、情報収集にはインターネットも重要な道具になります。

しかしインターネットにある情報をただ拾うのではなく、自分の知性を駆使して分析し、価値ある情報へと昇華させることが求められます。


あらゆる分析においいてですが、データが足りないと言う人が多くいます。
足りない情報は知性を使って、想定しそうなデータを当てはめるしかありません。

そもそも情報は知性と組み合わせて初めて意味を持ちます

クロキ

たとえ間違うことがあってもいいので、自分の頭で考えて判断する姿勢を持たなければいけません

強みを見つけ、磨く

強みは必ず好きなことの中にある」と森岡氏は言います。

成功は弱みから生まれることはありません。

強味と特徴、それを活かせる文脈をセットで考えましょう。

時間、精神、体力に限界はあります。
戦略がないキャリアは負けが確定です。

そのための方法として、自分の好きを動詞で付箋に書き出す、といった方法をオススメしています。
その付箋を3つに分類することでビジネスにおける自分の得意分野を明確できます

3つの分類

  • Tの人(Thinker):思考力が強み
  • Cの人(Communicator):対人能力が強み
  • Lの人(Leader):リーダーシップが強み
  • その他:上記3つ以外の分類(食べることが好きなど)

Tの人は、ゲームで戦略を考えるのが好きといった、考えることが得意な人です。
Cの人は、人と話すのが好き、贈り物をして喜ばれるのが好きなど、人とのコミュニケーションが得意な人になります。
Lの人は、目標を設定して、その目標をクリアするのが好きといった、自分や他人を動かすことが得意な人です。

これらの分類を活用し、自分の強みを見極めましょう。

一人でもくもくと考えるのが好きなTの人が、営業職などに就いてしまうと、苦労するかもしれません
少なくとも自分の特徴を活かせない職場選びはしない方が良いでしょう。

クロキ

最終的に同じような強みを持つ人と比較されるので、自分の強みはめちゃくちゃ頑張って磨かないといけません

マイブランドを設計する

キャリアを成功させるには、自分自身をブランドとして設計することが不可欠です。
つまり自分自身のブランディングです。

自分自身のキャラ設定をして、日々その設定通行動すること

ブランドを明確にすることで、プレゼンや面接など成功率が上がり、自分の理想とするキャリアへの道筋が見えてきます。
またブランドに自分の実力が追いつくようにもなります。

ブランドを設計し、周囲に伝えていく

伝え方が9割ではなく、伝える内容が10割
誰に、何を、どう伝えるのか
Who ➡ What ➡ How の順番で考える

クロキ

ブランドの設計書の中にあるもので、相手に一番ささりそうなものを選んで伝えていきましょう

マイブランドの4つのポイント

  1. バリュー(価値)は十分強いか:相手にあなたを買う理由がありますか?
  2. ビリーバブル(信頼性)があるか:相手に信じてもらえるだけの根拠は提示できますか?
  3. 際立っているか:ただの差別化ではなく、選ばれるための差別化ができていますか?
  4. 自分の本質と一致しているか:自分と正反対のキャラクターを演じていませんか?24時間365日徹底してそのキャラクターの行動が取れますか?

フレームワークとなる三角形の図式と作ります。


攻略する市場を選ばないと、いつでもどこでも戦いますということになり、資源が足りなくなってしまいます。

誰に買ってもらうのか。
何を買ってもらうのか。
どのように知ってもらうのか。

これらのことを決めた後は、具体的にどのような表現をすれば、良いかを検討し擬人化します。それがあなたのブランドキャラクターになるのです。

著者は、就活の面接の際、他の学生が皆同じように阪神淡路大震災のボランティア経験を語るのを辟易しながら聞いていたそうです。

面接で勝つために何が必要なのかをまるで考えていないと。
耳が痛いですね。

著者は、自身の経験からバイタリティをアピールするため、インドネシアをヒッチハイクで横断した話を持ち出しました。
また精神力を印象つけるために、フィリピンのボラカイ島に沈んでいる 駆逐艦を見るためにディープダイバーの資格まで取ったこと、そのダイビングの際、潜り過ぎて死にかけたが、冷静に対処して生還した話をすることで面接官の度肝を抜いたそうです。

不安は挑戦している証拠

不安を感じるのは、挑戦している証拠」——森岡氏はそう述べています。

挑戦しなければ不安も生まれません。
しかし、不安を感じる状況こそが成長のチャンスです。

森岡氏もP&G時代、厳しい競争の中で自信を失いましたが、それを乗り越えることでマーケティングの道を究めるきっかけを得ました。

挑戦のための具体的なアクション

  • 不安を前向きに捉える:不安=成長の機会と考える。
  • 小さな成功体験を積む:挑戦の中で小さな成功を重ね、自己肯定感を高める。
  • 挑戦する環境を選ぶ:安心できる環境に留まらず、自分を成長させる場を選ぶ。

書籍『苦しかった時の話をしよう』のタイトルの意味とは

本書のタイトル『苦しかった時の話をしよう』は、著者自身が新入社員時代に経験した絶望と苦しみを語ることからきています。

「苦しさ」とは、自分自身の存在価値を疑う状況に追い込まれた時のことだそうです。

それまで「できる人間」だった著者は、入社後に「一番できない人間」だと感じるようになりました。

しかし、それも当然のこと。
一定基準以上の才能を持つ人たちが集まる企業では、その中で能力を磨いた先輩達と比べて、新入社員が力の差を感じるのは避けられません。

潰れないための戦略

重要なのは、最初から「勝とう」とせず、「最後尾からスタートする自分」を受け入れること。

  • 自分を「できない人間」ではなく「成長する人間」として捉える。
  • 昨日よりも少しでも賢くなったと実感できれば、それで十分。
  • 貪欲に学び続け、数年経てば道は開ける。

昇進と失敗から得た教訓

著者は昇進の機会を得たものの、突然のプロジェクトの担当が変更になり「危うい計画」を任せられることに。

やる前から大失敗が見えている状況の中、「会社を辞める」か「プロジェクトをやるしかない」という二択を迫られます。
著者は苦渋の決断ながら会社に残るを選びました。
結果、プロジェクトは大失敗し、多くの人を裏切る形になってしまいました。

この経験から得た教訓:

  1. 無力なサラリーマンでも、後ろ向きの仕事は避けられない。
  2. 結果を出さなければ、誰も守ることはできない。

このプロジェクトの失敗によりプライドが打ち砕かれ、著者は新たな視点を持つようになります。

  • もっと過酷な状況でも結果を出せる人間にならなければならない
  • そのためにマーケティングスキルを極限まで鍛えることを決意。

実力こそが全て

プロの世界では、親切や厚意を期待するのは甘い考えだと言います。

  • 実力がなければ淘汰されるだけ。
  • 友情もリスペクトも、相手からもらうものではなく、自らの実力で勝ち取るもの。

海外プロジェクトでは、著者は差別的な扱いを受け、精神がすり減る日々を送ります。

  • 上司から「無能の烙印」を押され、「仕事に来るな」とまで言われる。
  • しかし、「迷った時は厳しい方を選べ」と決断。
  • 結果を出すことで、環境が変わり、評価も変化。

挑戦することで得られる成長

  • 環境を変えて自分を追い込むこと。
  • 挑戦が多いほど、人は飛躍的に成長する。
  • 眠っていた能力が覚醒する。

一方で、安全な道を選び続けると、

  • 成長できず、強くなれない。
  • コンフォートゾーンを出ない限り、潜在能力は覚醒しない。
  • 100の自分に対して120や130の負荷をかけることが成長の鍵。

不安を受け入れる

未来は不確実で、不安を感じるのは当然のこと。しかし、成長し続ける限り、不安は完全になくなりません。

  • 「不安に慣れる」ことが大切。
  • 不安を燃料にして、より強くなる。
  • 不安なのは「挑戦している証拠」。
  • 知性が高いほど、不安を強く感じる。

失敗を恐れるな

  • 成長し続けることが最も重要。
  • 目標達成の確率は「諦めない限り」上がり続ける。
  • 「挑戦しなければ失敗しない」=「何も成し遂げていない」と同じ。

例えば、会社で最悪の事態は「クビになる」ことくらい。

しかし、多くの人はクビになっても新しい仕事を見つけています。

  • むしろ、今より良い環境に出会える可能性もある。
  • 「職を失う怖さ」の半分以上は自己保存本能が作り出したフィクション。
  • 脳が変化によるストレスを避けるために、不安を増幅させているだけ。

日本人の「挑戦しない」マインドが弱さを生む

  • 多くの人が挑戦せず、変化から逃げる選択を続けている。
  • その結果、成長できず、痛みにも強くなれず、どんどん弱くなる。

最後に考えてみましょう。

「何も失敗しない人生」を送った自分を想像してみてください。
失敗しないことが、最大の失敗ではないでしょうか?

死の間際に「何も失敗しなかったな」と呟いて満足できるますか?

「何も失敗しない人生」=「何も挑戦しなかった人生」、となってしまいます。

まとめ|ビジネスマンが本書から学ぶべきこと

『苦しかった時の話をしようか』は、キャリアを築く上での重要な考え方を示してくれる一冊です
。森岡氏の実体験に基づいたアドバイスは、単なる理論ではなく、著者が娘へと語る自らの経験と学びによるものです。

ビジネスマンが本書から学ぶべきことは以下の4つです

  • 自己分析を深める:自分の強みを知り、それを活かせる環境を探す。
  • 不安を成長の機会と捉える:挑戦することで道が開ける。
  • 戦略的にキャリアを築く:環境選びが成功を左右する。
  • マイブランドを設計する:自分はこういう人間だと信じ行動する

これらのポイントは、今後のキャリア形成において確かな行動指針となります。

本書は、著者がこれからのキャリアに悩む娘へと送った手紙をまとめたものです。
単なるキャリアの築き方だけでなく、生き方としてのアドバイスも多くあります。
読んでいて感情を揺さぶられる場面もいくつもあります。

自分自身の強みを探したいだけでなく、人生で迷っている方にもぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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