推論の技術とは?
「推論の技術」(羽田康祐 著)は、ビジネスにおいて必須となる論理的思考力を高めるための実践的な方法を解説した一冊です。
目まぐるしく変化し、不確実性が高まる現代において、正解のない課題に対してどのように論理的な結論を導き出すという力は、どんどん重要になってきます。
本書では、推論のプロセスや帰納法・演繹法の活用方法、さらには日常業務での実践方法が具体的に紹介されています。
日々の仕事の中で、実際に論理的思考を実践し、PDCAを回していくことで、さまざまな問題を解決する力を養うことができると著者は言います。
この本を読むことで、得られるメリット。
- 論理的思考力が向上し、問題解決能力が高まる
- ビジネスコミュニケーションがスムーズになる
- 生産性向上につながる思考法が身につく
- 推論力をトレーニングし、意思決定の精度を高めることができる
書籍「推論の技術」の基本情報
- 書籍名:推論の技術
- 著者:羽田康祐
- 出版社:フォレスト出版
- 発売日:2020年1月21日
- ページ数:291ページ
どんな人におすすめ?
本書は、以下のような方には特におすすめです。
ビジネスパーソン:提案力や問題解決能力を高めたい人
コンサルタント・マーケター:論理的思考を鍛え、分析力を向上させたい人
リーダー・マネージャー:チームの生産性を向上させるための思考法を学びたい人
思考力を鍛えたい人:論理的に物事を考え、正しい判断を下す力を身につけたい人
「推論の技術」の要約(重要ポイント)
推論力とは、未知の事柄について道筋を立て、論理的に妥当な結論を導き出す能力のことです。
特に、不確実性が高く、環境の変化が激しい現代において推論力は非常に重要になります。
この世界には、問題に対する答えが必ずあるわけではありません。
存在しないものを探しても見つけることはできません。
まず教科書のような正解はこの世の中には存在しないという、事実に気づくことから始めましょう。
推論力は、頭の良し悪しではありません。
頭の使い方の上手さに関わる方法論の問題です。
つまり、推論力には再現性があり、頭の使い方やその過程を理解し、地道に習慣化することで誰でも身につけることができます。
なぜビジネスに推論力が必要なのか
推論力はビジネス思考において重要な要素です。
自分では変えることができない周辺環境を選定し、その前提をもとに推論を行い、その推論を基に結論を導き出すプロセスが求められます。
推論力は分析力を高め、事実とその関係性を正確に読み取る能力を養います。
ビジネスコミュニケーションにおいても、話のズレを減らし、伝えたい論点と相手が求める論点の一致を目指します。
例えば、コンサルティング業界でよく使われるフレームワーク「雲、雨、傘」というものがあります。
前提:空が曇っている前提
▼
推論:雨が降りそうだ
▼
結論:だから傘を持って行くべきだ
このようなプロセスで結論を導いていきます。
さらに、推論力を駆使することで、生産性が向上します。
パレートの法則(20対80の法則)に基づき、重要な20%を推論で導き出すことができれば、その20%にリソースを注ぐことで、生産性を向上させることもできます。
推論のプロセス
推論は、以下のような流れに沿って行っていきます。
1.事実を認識する
2.問題意識を持つ
3.推論する
4.仮説を導き出す
5.仮説を検証する
6.結論を出す
ビジネスにおける思考力と推論力

- ビジネス思考力: 何をどう考えるか
- 分析力: 物事や関係性をどう捉えるべきか
- コミュニケーション力: 何をどう伝えるべきか
- 生産性: 何をどう進めるべきか
- 提案力: どう期待と納得を作り出すべきか
ビジネスの中で、こういった思考をするとき、少なからず投資という側面を持ちます。
根拠のない思いつきにならないよう、推論力を磨いていきましょう。
「優れた洞察」を養う帰納法
帰納法は、複数の事実から共通点を発見し、結論を導き出す推論法です。
帰納法をビジネスで活用する場面は、環境の変化に対応するための方針や戦略策定などです。
また、世の中の事象から法則を発見し、学びに変える局面でも活用できます。
ビジネスは環境の影響を受け続けるため、帰納法はPEST分析や3C分析など、外部環境分析のフレームワークと相性が良いです。
PEST分析とは
- 政治的要因 (Politics)
- 経済的要因 (Economics)
- 社会的要因 (Society)
- 技術的要因 (Technology)
フィリップ・コトラー教授が開発したフレームワークです。
世の中で起こっていることを、上記の4つの切り口で分析し、自社にどのような影響を与えるかを分析するフレームワークとして有名です。
3C分析とは
- カスタマー (Customer)
- コンペティショナー (Competitor)
- カンパニー (Company)
元マッキンゼーのコンサルであった大前研一さんが開発したフレームワークになります。
自社を取り巻く市場環境を3つに分類し、市場の動向を分析する際に用いられます。
フレームワークを使いこなすコツ
フレームワークを使いこなすためには、単に情報収集や整理のためのツールとして用いるだけではいけません。
機能的な推論を働かせ、得られた情報から有益な資産を導き出すことが重要です。
複数の事実や市場環境の変化から共通点を見つけ、その共通点に基づいて方針や戦略を策定するという機能的な推論を意識して活用しましょう。
帰納法の使い方 4ステップ

1.様々な事実に気づく
2.複数の事実の共通点を発見する
3.結論や法則を見いだす
4.アナロジー(類推)を使って法則を応用する
ステップ1: 様々な事実に気づく
観察力を高めることで、見えている世界の広さや大きさが変わります。
観察力を身につけるために、次の3つを実践しましょう。
- フォーカスを絞る: 自分の関わっている物事や知りたいテーマに関連する情報に対する感度を高めます。
- 視点を持つ: 変化の視点や時系列の視点を意識すること、物事の差を捉える比較視点を持つことが有効です。
- 当たり前を疑う: 日常の常識を疑い、違う視点から物事を捉えることが重要です。
ステップ2: 複数の事実の共通点を発見する
具体的な事実の中に共通点を探します。
また、具体的から抽象化して共通する概念を探し出します。
ステップ3: 結論や法則を見いだす
見えている事実から、見えない共通点やメカニズムを見抜き、それに基づいて結論を導き出します。
ステップ4: アナロジー(類推)を使って法則を応用する
見えている事実から見えない概念を見抜き、それを他の分野に応用する習慣を身につけることが大切です。
様々な分野から法則を抜き出し 様々な分野に応用する習慣を持っているのです。
あらゆる物事から法則を得て異なる分野に応用する習慣を身につけているため、なんでもこなしてしまいます。
これができるようになれば、 あなたも見えている世界を何倍にも広げ、何をやらせても優秀な人に近づくことができるでしょう。
帰納法をトレーニングする方法
帰納法は知識ではなく、運用能力です。
勉強だけではなく、日々の習慣や業務の中で帰納法を活用することが重要になります。
職場での問題解決に帰納法を組み込み、フレームワークを活用して問題発見と推論を行いましょう。

帰納法を活用する2ステップ
- フレームワークを使って問題を発見する
- 帰納法を活用して提案ロジックを考える
くろき問題を見つけたら、帰納法を使って根拠のある提案を上司にしてみましょう。
「予測と検証」ができる演繹法とは
演繹法は、前提となるルールに物事を当てはめて結論を導き出す推論法です。
演繹法を活用する際は、前提となるルールが正しいかどうかを慎重に確認する必要があります。
演繹法の3ステップ
1.前提となるルールを見極める
2.前提となるルールに目の前の物事を当てはめる
3.結論を出し、その結論をチェックする


演繹法をビジネスに生かす
演繹法は、「市場動向の予測、企画提案、KPI設定」などに活用できます。
前提となるルールに基づいてビジネスの方向性を決定する際に役立ちます。
演繹法の応用テクニック
クリティカルシンキングでは売上を上げるという前提を疑ってみます。
売上とは 利益を上げるための手段であり、目的ではありません。
どんなに売り上げを上げたとしても コストがそれ以上にかかっていれば利益はマイナスになってしまいます。
売り上げを上げるだけでなくコストを下げるという別の可能性も見えきます。
剪定を概念で捉える思考法 概念化思考の例:
様々な事実を実体として捉えるのではなく、より全体的な概念として捉え直します。
例えば 、紙の販売量を増やしたい場合、紙を概念化し紙の価値を列挙します。
【紙の価値】
・文字や絵を書き込むもの
・何かを包むもの
・拭くもの
・敷くもの
・貼るもの
前提を捉え直す 思考法 ラテラルシンキング:
ラテラルシンキングは前提の置き方に着目し、前提そのものを捉え直す発想をすることで、新しいアイデアを生み出そうとする思考法です。
前提を捉え直すとはどういうことなのか、例で解説します。
有名なものだと、「エレベーターの待ち時間」についてでしょうか。
エレベーターが来るまでの待ち時間が長い、というクレームがあり、その解決策を考えるものです。
一つの対処法ではありますが、コストも時間もかかってしまいます。
ここで前提を変えると、
アブダクションとは
アブダクションは、現象の背後にある原因を探ることで法則や仮説を導き出す推論法になります。
思い込みや決めつけに注意し、様々な仮説を検討しましょう。


アブダクションの使い方5ステップ
推論は、以下のステップで進められます。
1.起こった現象に自覚的になる普段から気づきを意識する
▼
2. 起こった現象に対して疑問を抱く物事の変化や差を発見したらそれを適切な疑問に捉え直す
▼
3.様々な法則を当てはめて仮説を導き出す疑問は持てても仮説を導き出せないと感じるならまず法則や理論フレームワークを数多く学んでおこう。
モレなくダブりなくロジックツリーを作る
▼
4.仮説を構造してさらなる仮説を導き出す
▼
5.仮設で起こった現象との間にある因果関係を検証する





アブダクションで多様な仮説を立てられるかはあなたがストックしている法則や、フレームワークの多さにかかってきます
「推論の技術」を読んで気づいたこと
- 正解がないからこそ、論理的に思考することで最適な道を模索することができる
- 推論力は「頭の良さ」ではなく「頭の使い方」で、誰でも使うことができる
- フレームワークを単なる情報整理ツールとして使うのではなく、推論のための武器として活用する
- 観察力を鍛えることで、より質の高い推論が可能になる
実践ポイント
- 日常の出来事を推論トレーニングの場とする(例えば、通勤途中に見かけた事象から推論を行う)
- 報告や提案時に「帰納法」や「演繹法」を意識する(結論の根拠を明確にする)
- フレームワークを活用し、論理的な思考の習慣をつける(まずは、たくさんのフレームワークを学ぶ)
「推論の技術」のまとめ
「推論の技術」は、単なる知識としてではなく、実際に使える思考技術を学ぶことができる一冊です。
特にビジネスの現場で使える論理的思考を鍛えるための具体的な方法が紹介されています。
本書を読むことで、問題解決能力や提案力を向上させ、より説得力のあるコミュニケーションができるようになるでしょう。
日々の業務や生活の中で推論を意識し、少しずつトレーニングを重ねることで、誰でもこのスキルを身につけることができます。



推論力を鍛え、不確実な時代を生き抜くための武器を手に入れましょう!




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